読書日々 955

◆191011 読書日々 955
「ガク爺」に感謝!
 いちだんと朝夕の温度が落ちた。室温が二〇度を切ることしばしば。寒がりだが、なんとか暖房なしでしのいでいる。
 1 BS(NHK3)の「盤上の向日葵」(全4回)を興味深く見続けた。ミステリである。原作をよほど読みたくなったが、我慢がまん。演技「過剰」の千葉雄大や竹中直人はいつもなら御免こうむるが、刑事役の大友康平や蓮佛美沙子(元奨励会生で三反)の好演(?)で帳消し。それにしても「れんぶつ」とは恐れ入谷の鬼子母神だ。
 将棋は父が好きだった。家には立派な「盤」があって、一度だけ父と手合わせしたことがあった。飛車格落ちだったが、情け容赦なくたたきのめされ、それ以降二度と盤を囲むことも、そもそも将棋をはじめ勝負事に手を出すことはなかった。恩師の一人、森信成先生(大阪市大教授)は、升田幸三のフアンで、会うごとに「おまえが、将棋が出来たらな!」と嘆息されることしきりだった。でも博打(もちろん田舎の賭け事で唯一の娯楽)好きだった祖父や父のようにはならないという思いが強く、「賭け事」厳禁できた。
 2 だからというわけではないが、競馬をスポーツとして観てきた。馬券を買ったこと、買いたいと思ったこともない。騎手中心に観てしまう。とりわけずーっと武豊の背中を追ってきた。いまでも「武豊」が走っている背中を、福永祐一や藤田菜七子に見てしまうほどだ。その武も50の坂を越えた。といっても、自分の50代を考えると、上り坂だという思いが強かったが。
 武豊の世代、野茂・羽生(将棋)・イチローは、世界のどこに出しても遜色がないと思えた。その羽生も、ここ2年、無冠である。しかし、羽生や武のようなスマートな勝負師は当分現れそうもない(だろう)。将棋の大山や升田、騎手の天才福永洋一や勝負師岡部幸雄(3000勝直前で引退)の泥臭さ・豪腕とは異質なタイプと思える。
 3 もう一つ、『福沢諭吉の事件簿』にかんする記述を発見。
 ガク爺(小西祥二) @gakujii)
〈今日は9月11日です。
 あの日から「19年」「18年」「8年6か月」となる日です。“特別”な日と捉えたい一日です。(略)
 題名に「福沢諭吉」とあり,『学問のすゝめ』などの印象から,名前に続く「事件簿」が適わない感じがしました。
 それが気になって『福沢諭吉の事件簿 I』(言視舎・刊)を読みました。
 幕末から明治のできごとを,福沢諭吉と福沢村在住の渡し船頭 由吉の行動と会話(?)で描いています。
 6つの事件が,それぞれ4項で話が進んでいきます。そこに登場する人物,出来事は,「知っている」「聞いたことがある」ことですが,「えっ,そうなの?」「本当に?」と思うことがありました。
 著者の鷲田氏がブログで述べています。
 「歴史」とは「書かれたもの」の意で、「創作〔フィクション〕」である。東の司馬遷『史記』も西のヘロドトス『ヒストリアエ』も、そして日本の『日本書紀』も、文字通り、「書かれたもの」である。エッ、「史実」に基づいた「歴史」を無視するの、というなかれ。「史実」といわれるものも、「書かれて」はじめて「歴史」になる。つまりは「創作」であるほかないのだ。
 本書に“書かれた”ことが歴史となっていくのかもしれません。
 「事件簿5 竜馬が暗殺されるの巻」では,これまでとは違った見方が描かれ,わくわくしながら読みました。
 竜馬が裏で仕掛けた大政奉還にはさほど驚かされることはなかった。
 だが,十一月の二十日過ぎ,留守宅に驚天動地の報が届いた。
「坂本竜馬が京で暗殺された!」
 報じてくれたのは,浦賀奉行与力で軍艦役である中島三郎助である。(略)
 諭吉が暗殺に至った経緯や首謀者に思いを巡らせます。意見表明であり自問自答であり,それを続けます。
 そして,京のようすを探った由吉から報告を受けながら,「暗殺動機」審問を行います。
「重要なのは,すでに確認したように,竜馬を殺した実行犯をあきらかにすることではない。誰が,どのような勢力が竜馬を殺す必然があったかを明らかにすることである,いいね。
 きみの説明をわたしなりに検討してみた。一つ一つ,きみの判断を仰ぐから,遠慮なく答えてほしい。これもいいね。」
(略)
 第一件(ケース1)
 竜馬の最大の敵は徳川幕府である。(略)
 第二件(ケース2)
 竜馬の大政奉還にもっとも反対していたのは,薩摩であり,長州である。(略)
 第三件(ケース3)
 朝廷は昔から密諜のすみかである。(略)
 第四件(ケース4)
 竜馬はこの一年ほどかなりの数のトラブルを抱えていた。(略)
 第五件(ケース5)
 土佐藩は大政奉還を将軍慶喜に建議した当事者である。(略)

 さて,諭吉と由吉とは,どのように論じ,審問していったでしょう。
 新しい展開に,もっと知りたい,調べてみたい気がしてきます。
 福沢諭吉とともに,幕末・明治を探索してみませんか。

 目次
事件簿1 「スパイ」松木弘安の巻
事件簿2 坂本竜馬と密会するの巻
事件簿3 幕府による文明開化をめざすの巻
事件簿4 「長州再征に関する建白書」の巻
事件簿5 竜馬が暗殺されるの巻
事件簿6 偽版探索の巻〉

 著者にとっては実にありがたい紹介「記事」だ。ありがとうございます。