読書日々 674

◆140530 読書日々 674
目から鱗=村瀬学『徹底検証 古事記』
1 5/29 風が心地よい。今日で今年のワラビ採りを終わりにする。茎が固くなってきているだけではない。群生している漆系の草木を見ているだけで痒くなる。それに今年は豊作だった。二人では食べきれない。子どもたちにも送っているが、もういいだろう。
2 山本周五郎『栄花物語』を読んだ。『日本人の哲学3』にも書いたが、田沼意次の歴史評価を180度変えた作品だ。周五郎が昭和の初期から書こうとして書けなかった作品で、『週刊読売』に連載してすぐ、1953年、要書房から単行本化された。聞き慣れない出版社だろう。「榮花」となっている。長編作家としての周五郎の声価がまだ定まっていない時代の作品だったのか、前借常習犯の周五郎にして、この出版社からは印税の取りこぼしがあったそうだ。この出版社の本、アマゾンの古書通販では9000円になっている。(恁う知るだけで、なにか儲けた気になるから、恐ろしい。)全集、小説全集、長編小説全集、文庫本ももっているが、文庫本(新潮社)はよく売れているものの、わたしの目にはもう読みにくい。
 何度目かの再読となったが、仕事のための読書である、こんなありがたい読書もない。時代小説だが、現代文で、時刻も十時とある。いいね。
3 インドで政権が変わる。外資導入と規制緩和でインド経済の方向性も転換をとげそうだが、チャイナ経済と絡んで安倍政権にこれでまた一つ有利な条件が加わるかもしれない。チャイナと関係強化を図ってきた韓国の排日政策に変更があれば、安倍にとっては追い風がもう一つ吹くかも。
 といっても、21世紀の基本趨勢は「日本」に有利に進むという基本方向を見誤らなければ、あらゆる分野で競争力強化を図るということが日本人のつねに変わらない進み方である。仕事に熱中できるから、寸暇が望ましく、寸暇を楽しむことが出来るのだ。(ということでもないが、今日、長い校正が終われば、すすきのに行って一心不乱に呑む、ということにしよう。)
4 ものを書いていていちばん得したと思えるのは、新しい作品に出会えることだ。『日本人の哲学3』の5「歴史の哲学」で書いて、以前にもこの欄で書いたが、村瀬学『徹底検証 古事記』(言視舎 2013)もその一つだ。『古事記』は「歴史書」ではない、歴史偽書だが、時代小説として読み、解けば立派な、日本建国史を知るうえで貴重な作品である、ということが村瀬の著作を読むと、目から鱗の状態になる。
 今度、少し時間を経て、「歴史の哲学」で節をとって書いた部分を校正してみて、「目から鱗」の部分を再再度納得することができた。鉄文化が生まれて初めて統一政権が出来る。『古事記』はその鉄文化の誕生物語なのだ、というのが村瀬作品の結構である。
 そういえば最近、高円宮妃と出雲大社の宮司千家の嫡子の婚約が整ったというニュースを見た。「火と鉄の神々」の子孫の結婚である。『古事記』は平安初期に書かれた小説で、天智・天武が建国した日本の再発見でもある。村瀬作品は、一見難解で取っつきにくいように思えるが、きちんと読むことが出来る本だ。そうそう、ミステリーでもあるから、知的興奮を呼ぶ覚まされるかも。
5 朝日新聞に漱石の『こころ』が連載されている。連載の合間に、いろんなエピソードが示されていて、興味尽きないが、漱石が英留学中、当時の欧米文学の最新潮流を学び取ろうとして悪戦苦闘したエピソードも聞きたいね。この留学の成果を比較文学研究の視角から論じた飛ヶ谷美穂子(ひがやみほこ 1950~)『漱石の源泉 創造への階梯』(慶大出版会 2002)のような作品解説・エピソードも読みたいね。漱石ほど、勝手気ままに読解されてきた作者は少ないのではないだろうか。井上ひさしやカンサンジュのような漱石論は、いい加減にしてほしいね。