..◆141031 読書日々 696
「あなたは幸福ですか? 幸福でないかたは、……ご相談ください。」
早々と冬タイヤに変えた。例年より1月は早いだろう。ただし取り替え理由は、夏タイヤの空気圧が不十分だからだ。給油所で取り替えたが、相変わらずガソリンの値が下がらない。というか、ずいぶん下がったようなのに、159円だった。1978年の第二次オイルショック時と同じ価格である。石油の元売値は劇的に下がったが、インフレだから、上げ止まり状態だ。
ヒルティの『幸福』をテキストに書いている。もう少しで200枚だから、想定内というところかもしれないが、とにかくスピードが落ちている。雑な日々が続いている感がする。
読む本もこのところ雑雑たるものだ。藤原宰太郎『世界の名探偵50人 あなたの頭脳に挑戦する』(KKベストセラーズ 1972)という古い新書を取り出して再読していたら、土屋隆夫『午前十時の女』(光文社文庫 1997)の名が出てきた。すぐ買って読んだ。既読感がある。松本清張の「名作」、「地方紙を買う女」が放つ色彩をもつ軽めの短編集だ。クリスティの短編集をまとめて読んだ。『パーカー・パインの事件簿』(創元推理文庫)は「あなたは幸福ですか?」にはじまる広告コピーをだし、依頼者を募る風変わりな探偵物語だ。クリスティも短編が面白い。コーヒーを飲みながら、ふっと思いを巡らせると、短編が一本できあがる、という体のものである。そういえば曽野(綾子)さんが、同じようなことをいっていた。曽野さんも短編のほうが面白い。田辺聖子さんが文化勲章をもらった。この人の短編は桁外れに上手い。
八月に書き下ろした『寒がりやの坂本竜馬』はまだ行き先が決まっていない。雪を蹴立てて奥州路を竜飛岬まで行った吉田松陰と、東京以東に足を向けなかった竜馬を比較した部分がある。のちに竜馬は、松陰が主張した「鬱陵(うるるん)島」開拓(占領)を実行に移そうとして失敗する。ただし竜馬は蝦夷開拓をプロパガンダに利用しようとしたが、一度も実行に移そうとしていない。そんな折、秋山香乃『吉田松陰 大和燦々』(NHK出版 141025)が贈られてきた。ま、来年の大河ドラマのヒロインが松陰の妹であるよしだろう。それにしても、今年の「軍師黒田官兵衛」はいただけない。映像がもっている独特のロマン性がまったく観じられない。まわり全部が、竹中直人の品のない三流役者に特有の、抑えのきかない毒気に当たったのか。ついに観るに堪ええなくなって、スイッチを切ってしまった。
池田俊二『見て・感じて・考える』(言視社 141031)を読んだ。わたしと同年配の老人の慨嘆といえばそれまでだが、郵政省出身(元「逓信協会雑誌」編集長)で、西尾幹二と志を同じくする人の慷慨だ。私憤も込められているように聞こえる。読まないで非難するというのも、かえって清く、なかなかいい。物わかりのいいのは、困りものだ。
味噌は、娘婿二人とする安倍首相評価である。郵政省出身だから、小泉を無能と決めつけるが、安部の徹底できなさをはげしく批判する場面もある。著者は、自説(真正保守)に固着して、説が近しい人を最も痛烈に批判する。昔の日共の社民批判(「社民=社会ファシズム」)と同じやり方だ。わたしはこういう物言いをどうしても理解・共感できない。福沢諭吉が援助した金玉均のこと、諭吉の「脱亜論」の箇所は賛成したい。それに、娘婿二人をまるで「弟子」のように頭をなぜ、手なづけているのは、羨ましいかぎりだ。浜松町から鉄砲図、さらには新大橋まで、わたしがなんども歩いたなじみの風景が登場してくる。いいね。
2012年に『理想の逝き方』(PHP文庫)を出した。近代日本人だけを扱ったが、外国まで広げれば、ヒルティ(1833~1909)はかならずはいる。77歳、約束の原稿を書き上げ、ジュネーブ湖畔のお気に入りのホテルの一室で息を引き取った。「あなたは幸福ですか? 幸福でないかたは、これからでる拙著をお読みください。」