読書日々 1012

◆201113 読書日々 1012 馳星周『比ぶ者なき』
 どこに住んでいても、この季節(冬期)は馴染むことができない。1960年、関西に「留学」して、陰鬱な日本海側を、「日本海」ときに「鳥海山」(寝台)という特急に、場合によっては、青森から富山までは準急、あるいは東海道・常磐線・東北線の鈍行をたどって、汽車の煙まみれになって、安(普通)運賃で揺られる無言の旅を楽しむ「快」(!?)はあったものの、火の気のない関西の冬は心底まで凍えるのを覚えた。というか、憾んだ。
 1 それでも結婚してはじめて、灯油ストーブ、それもブルーフレーム(青い炎)という格別の物を購入できたときは、「火」が「灯る」という安心感に多少とも打ち震えたのではなかっただろうか? 伊賀に8年住んで、居間と書斎に本格的な灯油暖房設備を据え付けることが出来た時、はじめて「人心地」ついた、と思えた。(「人」には家族とわたしが入っている。)
 それでも冬は乾燥する。これがわたしにとっては厄介者だった。北海道に戻って、冬期が半年続く。乾燥期だ。それでも、3年前、郷里に戻って、昨冬から自室に加湿器を備えることができた。手入れは面倒だが、至福である。部屋にこもりっきりでも、干からびない。痒さもほとんどでない。コロナも怖くない(!?)
 2 馳星周(1965~)が『少年と犬』で2020年(上半期)直木賞を取った。浦河出身で、本名は板東齢人(としひと)、ロシア革命の首領、レーニンに因むそうだ。
 井上美香との共著『なぜ、北海道はミステリ作家の宝庫なのか?』(亜璃西社 2009)で、井上が「異端こそ日本文学の正当な潮流」として特筆大書したノアール(暗黒)作家として出発したベストセラー作家だ。最近は時代小説にも進出し『比ぶ者なき』(中央公論新社 2016)で、藤原不比等を書いている。
 横浜市大(理)出身というか、ゴールデン街出身というべき作家で、内藤陳の薫陶を受けた、稀代の読書癖を持つ作家でもある。などと知ったかぶりをしているようだが、島地(勝彦 元週刊プレーボーイ編集長)との対談でその一端を知った程度で、これから不比等を読もうというにすぎない。
 そういえば、ゴールデン街で、一日一冊を読むという、井家上隆之『量書狂読』(三一書房 1992)に出会ったが、なぜにも懐かしい。でもまあ、酒場では本の話しはしなかった。というか、すれば険悪になった。野球と政治と本の話は禁句だった。
 3 馳さんは、拙編集『谷沢永一二巻選集 下 精撰人間通』(言視舎 2016)を評してくれたことがある。一読、短いが、何か、爽快な気分になった憶えがある。
 北海道出身のミステリ界には、馳さんより少し先輩に、佐々木譲、東直己、今野敏さんたちがいる。佐々木さんは、最近「英雄たちの選択」(NHK)で、江川太郎左衛門についての対論に登場しているのを拝見した。あいかわらずシャープで若い。今野さんは、代表作シリーズ「隠蔽捜査」の最新作を心待ちにしている。
 でも、鮎川哲也の衣鉢を継ぐようなミステリ作家は、現れていない。わたしは今でも、ミステリアスな人生を送った鮎川信夫(吉本隆明の畏友)の療養先で、同じ鮎川(哲也)の代表作、『戌神は何を見たか』の重要舞台となった、長良川鉄道の白鳥(美濃)から福井に抜ける山裾にある、石徹白(いとしろ)にいってみたい、そこから越前へと抜けると勝山にたどり着きたい、と祈念している。美濃と越前、あるいは信州の国境は、昔も今も厄介だ。石徹白は、福井から岐阜に変わった。
 福井は、新田義貞が討ち死にした近くの黒丸城が、鷲田(彌左衞門=曽祖父)の出身地だ。勝山市にもどうやら鷲田があるようだ(息子の同期生がいた?)。それなくとも、勝山は行ってみたい酒どころだ。一本木酒造の「伝心」は極めつけで、唯一(?)、ススキノの「早蕨」で飲ませてくれる。ただし、昨年の暮れ行ったきりだ。ま、コロナ禍のおかげ(?)でもある。