読書日々 690

◆140919 読書日々 690
アベノミクス、デフレ基調のなかでインフレ政策を発動させる理由
 たまには政治経済についてのコメントを、という声がありました。
1 世界経済は、先進国ではあいかわらず「デフレ基調」です。原因は(1)文字どおり「世界経済市場」の成立です。価格競争の激化です。価格破壊はなお続行中です。価格競争には加わらない、は、市場からの撤退を意味します。廃業、よくて衰業以外を意味しません。(2)価格破壊のなかでとりわけ鮮明なのは、労働力商品です。第一因は、(1)の起因ともなった旧社会主義国の労働力が世界市場に投げ出されたことです。かつては1/10、現在でも1/5~1/3の価格の国との競争にさらされた、労働市場「鎖国」状態の日本は、もっとも大きな影響を受けました。日常必需品のほとんどは、チャイナ等で製造されるようになりました。(3)それに「円高」が加わりました。輸出製造業だけでなく、国内必需品のほとんども、労働力の安い海外に生産現場を移さざるをえなくなります。
2 アベノミクスは、デフレ克服の旗を立てました。熾烈かつ無謀な闘いの宣言です。(1)世界経済は、チャイナやインドではインフレ基調の速度を落としつつありますが、労働力市場では圧倒的な競争力を維持しています。同時に、世界労働力市場で日本がある程度競争に耐えうる価格差になりつつあります。(2)大胆な金融緩和策、インフレ政策を断行しました。円を刷りに刷りまくっているのです。結果、円安に振れました。1ドル80円が、100円になり、さらに上昇中です。輸出産業が息を吹きかえしつつあります。つれて、労働力価格低下に歯止めがかかりました。同時に労働力不足に悩まされはじめています。まさに現実は「矛盾」の連鎖です。
3 (1)日本の消費者にとってデフレ基調ほど好ましいものはありません。しかし同時に、労働力商品価格(賃金)低下を招きます。「労働者天国」のインフレ時代がじつに懐かしいのです。
 (2)インフレ政策はデフレ基調の針を強引に巻き戻そうとする政策です。賃金が多少アップするものの、消費者にとってはつらい。年金生活者にとっては、もっとつらい。
 (3)だがいま日本経済は総体として「陽」をえています。でもはっきり言って、先進国のデフレ基調は変わっていません。(4)チャイナは「世界の工場」と言われてきました。だが現在最も困難なのは、「高度成長」経済を続けているチャイナにちがいありません。低賃金・低価格で生産・輸出してきた経済が大きな曲がり角に来ているからです。インフレ基調の潮目が変わりました。「内需拡大」の声が高まり、地域格差是正の勢いはとまりません。純経済的にいえば、日本との賃金格差が1/3程度になったら、必需品の生産・輸出でも価格競争が可能になります。
 ただし日本が反撃できるかどうかは、自動的には決まりません。現実は矛盾体です。否定面ばかりを見、ため息をついているだけでは、意気消沈するばかりです。アベノミクスをチャンスとみなすか、その失敗を座視するか、で将来はうんと変わると思います。
4 1985年、株価・地価高騰と税収アップ、新卒者の賃金上昇と会社や公の金で飲み食いできた、「バブル」時代の開始時、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の声の裏で、デフレ基調経済がはじまったと看破したのが、「バブル経済」を煽った長谷川慶太郎でした。消費資本主義は、バブル経済であり、同時に、デフレ基調の経済である、というそれまでの経済学では説明できなかった「事実」を明示したのです。すごい眼力です。
 インフレ経済の過熱を必死に抑えようとするチャイナ、デフレ経済を超金融緩和政策で抑えようとする日本、この隣国のせめぎ合いのなかで、両国がどう隘路を切り拓いていくのかどうか、まさに21世紀の経済戦争の縮図がはっきりと姿を現しつつあると考えます。
 詳しくは、『日本人の哲学3 政治・経済・歴史の哲学』(言視舎)を一読下さい。