読書日々 650

◆131213 読書日々 650
ホームズの冒険、80年ぶりの新作登場!
 12/7 パークホテルで「きらく」の忘年会があった。とても広く落ち着いた地下の宴会場で、例年になくいい会だった。東京から背戸(『理念と経営』)さんや白山(大東文化大)さんも参加したばかりか、わたしのすぐしたの妹が横浜からやってきてこの会にはじめて加わった。「きらく」の忘年会にはじめて参加したのは、札幌に戻った最初の師走で、1983年だったから、ずいぶん古いことになる。
 その席で井上美香さんに「80年ぶりのホームズ新作!」と銘打たれた『シャーロック・ホームズ 絹の家』(角川書店 130430)を進呈された。未知の本である。といってももちろん新発見のコナン・ドイル遺作ではなく、作者はアンソニー・ホヴィッツ(1955~)である。およそ700枚の長編で、かなり前半から事件のあらすじが読めてしまったが、何といってもホームズである。おもしろかった。
 ホームズもののパスティーシュはそれほど読んでいないが、冷戦時代の傑作スパイ小説『別れを告げに来た男』を書いたフリーマントル『シャーロック・ホームズの息子』(新潮文庫 上下 2005)がいちばん気に入っている。第一次大戦時の事件で伯父のマイクロフトに育てられた息子と老ホームズが活躍する。ホームズは、通説では1854年に生まれ1957年になくなっている。わたしなどが中学生のころ亡くなったのだから、何ともすごい生命力だ(?!)。
 12/12 NHKのBS3で小津安二郎(1903.12.12~1963.12.12)の生誕110年、没後50年の特集番組があった。何とまあ切りのいい生き方をしたもんだと思うが、小津研究家の中澤千磨夫(道武蔵女子短大)さんからチャイナの上海交通大学で講演した「ゲラ」(「小津安二郎と志賀直哉」)が送られてきて、読んだばかりだったから、この特集の印象がいっそう強くなった。
 中澤さんからは別に12/8に投函された「好例」の絵はがきが届いた。松阪の高安町で開かれた〈オーヅをしのぶ会〉に出たという簡単な内容だが、日本内外から出されたはがきの束が手元にある。BSの中で、吉田喜重(映画監督 岡田茉莉子の夫)が、小津は多くの監督が手軽に撮りたがる「戦争」(社会性のあるもの?)などを映像化しなかった、と語っている。一人一人の人間を描けば「社会」などはおのずと表現されてくるというようなことをいうらしい。
 しかし「風立ちぬ」で宮崎駿が好戦的な「戦争」を描いたというので批判されているが、その非難に対して宮崎がちゃちなのは、好戦的な気分を間違ったものとみなして、反省めいたことをいうことにある。黒沢だって宮崎だって、その主要作品は人間の好戦性を描いたことにあるのではないのだろうか。わたしは、そうだ、といいたい。人間は「獣」だから好戦的なのではない。人間は愛や理性や平和のためにこそ戦争をする存在である。苦渋をともなった選択としてばかりでなく、嬉々としてそうする。察するに小津は「戦争」を厭だから描かなかったのではなく、描けなかったのではなかろうか。その是非は別として、小津の作品から、戦争を描けなかったのではなく、描けなかった意味や問題を分析してもらいたいね。
 「日本人の哲学4」の『経済の哲学』はまだ50枚あまりだが、全体で150枚を予定しているので、まずまずというところか。人間・社会と資本主義の適性、資本主義は「利潤」をめざすもので、その本性は「投機」であるという意味、したがって株で儲けた1万円も、汗水流してえた1万円も、同じだというのが資本主義の精神である、という点に焦点を当てることができたらいい。もちろんこの資本主義の精神を批判したいがためではない。岩井克人、吉本隆明、長谷川慶太郎、唐津一という高度=消費資本主義の代弁者をラインアップする理由である。
 12/12 7チャンネル「カンブリア宮殿」で紹介された浜松ホトニックはすごかった。「ないもの」を研究し開発する、というテレビの父といわれる高柳健次郎が創業した会社だ。めざすのはレーザー光線による核融合=発電で、開発を20(?)年続けてきたがあと20年は実用化に時間を要するだろうということだ。これって007ではないが、立派な武器開発だ。