読書日々 663

◆140316 読書日々 663
吉本隆明の講演のとき、大西巨人を失う。翌日は誕生日
 3/10 札幌大学の最後のゼミ生3人と「たぱす」で会食。翌日は上京するので、早々と退散。
 3/11 13時をわずかに過ぎて、浜松町大門の武鮨に着く。NHKETV「団塊スタイル」の藤原さんと読書についての取材を受ける。若い女性だ。13:30文芸社の佐々木さんがやってくる。佐々木さんには、『定年と読書』『定年と幸福』『シニアの読書生活』『もし20代にこの本に出会っていたら』と、読書生活を主体にした本を出してもらっている。佐々木さん、今日は調子がよさそう。読書をしない人を読書に向かわせるのは、フリーターを仕事に就かせるのと同じように難しい。正攻法でゆくしかない。そのさい重要点は、日本には、あらゆるジャンルに、どの時代も優れた物書きがいて、世界スタンダードの、読むに値する本を残しているということを、倦むことなく説くしかない。そういうことをアドバイスした。
 御成門の定宿で荷物を解いて、ベッドに倒れ込んだが、18時に言視舎の杉山さんと会う約束がある。ぎりぎりに目が覚めた。銀座のおでん屋で杉山さんとあれこれ語った。中村さん、井上美香の新刊、わたしへの依頼、それに明日講演予定の吉本隆明のことなど様々。いつものコース、Bookでおいしいウィスキーを飲む。帰りはいつもより早い。
 3/12 昼、キヨさんにメールが通じて、双子玉川で亀井さんと昼食。デパートの蕎は、予想通り美味くなかった。でも話が弾む。巡礼のたびでは、亀井さんが1回からの参加者で、キヨさんもベテラン、わたしが初参加したのは、15回の98年だった。話が尽きないが、講演関係者と会う時間が迫った。しかし、田園都市線で、青葉台まで急行なら20分かからない。ゆっくり鈍行で行く。講演主催は社会福祉法人の「試行会」、そのグループトップの小形さんとは昨年12月以来である。吉本さんの全集が晶文社から出ることになった話題であっというまに講演時間に。
 与えられた時間は1時間、吉本が戦後にはたした世界スタンダードの仕事について、その中心テーマについて、「消費資本主義」と「対関係」を主軸に語った。まずまずだったのではないだろうか。吉本を読み理解しなければ、「現在」の最も大きな問題、「消費」=「停滞」と「家族」=「少子化」を読み解くことはできない。この二つの問題は、吉本主義者も避けて通る問題で、原発問題とあわせると、吉本理解者の躓きの石でもある。さて講演はうまくいったのかな?
 会場には、昔のわたしの「弟子」(福祉施設で理事長をやっていたときの職員)がやってきていた。望月さんとは翌日逢うことを約す。
 3/13 誕生日。那須の板室温泉の大黒やホテルを経営している室井さんから、ちょっとした仕事を引き受けたお礼もあって、2泊の招待を受ける。煮詰まって、体にしびれが来ているので、よろこんでお受けした。女将のみよ子さんも巡礼仲間で、誕生会もやってくれるそう。
 8時過ぎに望月さんがホテルにやってくる。じゃあ、東京に出ようというので、武鮨に。昼食を「理念と経営」の背戸さん、文芸社の佐々木さんと待ち合わせているので、ランチを食べに来る大勢の客に混じって、美味い寿司をつまむ。じつに贅沢。
 余裕を持って那須塩原行きの新幹線に乗ろうとしたが、目の前で扉が閉まってしまった。足腰が自由にならず、急ぐことができないのだ。1時間待つことになる。渡部昇一『日本の歴史』⑤を読みはじめる。じつにおもしろい。歴史の事件と人物に共感できる特別の能力を渡部さんは持っているとしか思えない。
 那須塩原の駅には、室井さんの息子、英国のロンドン大学を出た康希君が迎えに来てくれた。お母さんと巡礼の旅で欧州各地を中学生の時から回った仲間だ。宿に着き、極上の湯に入ったが、全身がしびれている。これが老いるということなのだろう。ビールも美味くない。おいしい飯を食べたあと、みよ子・康希母子と歓談。
 3/14 昼に、岩崎・大村夫婦、今村、谷口、佐藤それにシスターがやってくる。みんな巡礼仲間だ。わたしをのぞいてカソリック信者。さらにつけ加えれば、曾野綾子の信奉者だ。わたしの誕生日は付録で、シスターの講義がメイン。わたしも陪席させられた。夜は、社長の俊二さんも混じって、談論風発、楽しい時間が過ぎてゆく。
 3/12、大西巨人が亡くなった、と知る。昨年末『文芸の哲学』(日本人の哲学Ⅱ)をお贈りしたところ、「御書ありがたく拝見、小生はただいま病臥中にて諸方面に失敬中、自然貴兄にも同様の状態。いずれ改めてご連絡の所存。 二〇一三、一二、一八 不乙」というはがきが出版社に送られてきた。いつものように超乱れのない美しい万年筆の字である。11/3/8谷沢、12/3/16吉本、14/3/12大西、同じ時期に鬼籍に入った。わたしが宝とも頼む書恩の人たちだ。
 3/15 宿に居残る岩崎夫妻を残して、去りがたい場所を離れた。この宿、「秘境」にある。電波が届かない。したがって、この日記は、家についてぼーっとしていたので、今日に遅れた。乞う、寛恕を。