読書日々 819

◆170303 読書日々 819
も~すぐ、春~ですよ。
 3月、暖かくなった。ぶり返しもあるだろうが、春遠からじである。
 1 3/1(水)、NHKの「探検バクモン」で、最も売れている中型辞典『広辞苑』(岩波書店)が放映されていた。わたしはこの事典〔ことてん〕=辞典(いまはデジタル版=4版 1991)を、「危ない記述」におちいっている・いないを決める「実例」集として利用する。特に日本の歴史記述では、信用できない。
 といっても、広辞苑と他の辞典を引き比べてみるといい。辞典の命である「字義」の部分は、『広辞林』『国語大辞典』と大同小異だ。なぜか? 『広辞苑』は後続辞典で、先行辞典を「引き写し」ているのだから。それはいい。
 ところで『広辞苑』は、『辞林』を売れ行きで凌駕した『辞苑』(博文館)の版権を買い取って、1955年、『辞苑』の編者、新村出(国語学者)をそのまま据え、『広辞苑』として販売する。ビジネス巧者で、これがヒットした。国語学界では、新村は、ONの長島だったからだ。この辞典、漱石全集とともに、岩波の米櫃で、社の屋台骨を背負ってきた。ただし、新村は、1行も書いていない。ま、これはいい。金田一京助だって、あちこちの辞書に名義貸しをしていた(と孫の秀穂がいっている)のだから。
 ところが、『広辞苑』の記述内容が一変する。第3版(1976)で、ソ連や中国の共産党の思想に追随士、行動を黙認する記述に満たされる。20世紀末、社会主義諸国がぶっ潰れても、その思想・言葉を継承してきたのが広辞苑なのだ。ただし、都合の悪い部分は、訂正・明記せず、削除・隠蔽する。この基本姿勢は、21世紀を過ぎても変わっていない。なお、谷沢永一・渡部昇一『広辞苑の嘘』(光文社 2001)がある。参照されたい。
 2 ロシアは国連の安保理常任理事国だ。拒否権を持つ。2014年2月、ロシアは、ウクライナ領の要所クリミアを軍事侵略・併合した。ウクライナが国連に安保理緊急会の開催を求めたが、ロシアが拒否権を行使する。国連総会は、ウクライナの訴状を、賛成100、反対11、棄権58(欠席24)で採択する。
 日本も国際連盟では常任理事国だった。満州事変(柳条湖事件)、満洲独立問題で、日本は中華民国に訴えられた。安保理では拒否権を発動し、リットン調査団派遣が決まっただけだった。その報告、日本の軍事行動は自衛ではなく侵略、中国の主権侵犯で、総会は、満洲国不承認を決議した。うけて、日本は国際連盟を脱退。
 もちろん、時代状況も事情も違うが、当時の日本政府と現在のロシア政府では、ずいぶん態度が違う。ロシアは、クリミア併合で、欧米諸国に経済制裁を受け、そのうえ石油価格の暴落で、経済は赤信号がともったまま。2015年のGNPは、韓国より上だが、東京都と同じだ。なのに、ロシアは態度がでかい。
 井上寿一『昭和史の逆説』(新潮新書 2008)は、日本の国際連盟脱退を、国際社会からの断絶ではなく、「満洲建国=独立」の解決策=国際融和策としてとらえる。一方で関東軍の独走をおさえ、一方で、協調外交を推進する政策であった、とのべる。こうみると、ロシアのプーチンの「孤立主義」よりはるかにましに思える。
 3 満洲問題は、じつに複雑だ。2つだけいう。
 1。日本が日露戦争に勝たなければ、満洲に軍が常駐しなければ、満洲はソ連に併呑され、朝鮮もその延長線上にあったことは、99%まちがいない。
 2。敗戦後、ソ連軍は、いち早く満州に進攻し、休戦協定以後も侵略を辞めず、大量の財(特に産業財)を日本人捕虜(? 捕虜とは兵役に限る)を使って自国内に運び込んだ。略奪・戦争犯罪だ。このソ連軍の援助で、中共(中国共産党)軍が満洲を占領・支配し、内戦=国共(国民党軍・共産党軍)戦の最大の根拠地としただけでなく、共産党政府(中華人民共和国)が成立した時、国内の鉱工業生産の8割を占めたのが旧満洲地区であった。宮脇淳子『世界史の中の満洲帝国と日本』(WAC 2010)を読むと、満洲が日本の「生命線」であったことがよく分かる。その重要度は、ロシアにおけるクリミアとは同断で論じることはできない。なお、宮脇さんは、岡田英弘さんの妻だ。
 4 昨晩、海竜社の下村のぶ子社長から電話があった。『日本人の哲学4』をお贈りしたお礼だ。海竜社には、何度かお世話になった。最近物故された三浦朱門さん、元気になった曽野綾子さんの話が出た。一緒に中東方面を巡礼した先達(仲間)だった。