◆180831 読書日々 897
新刊予定は『大コラム 平成思潮』だよ。
短い夏も終わったようだ。長い夜を楽しもうと思うが、残念ながら化粧直しのため、家(M)がシート(?)で覆われ、BS電波が遮断され、見ることができなくなった。それはそれで別に楽しむこともあろうというものだが、年のためもあって、新方式が思いつかない。
1 それで、短絡的に、チェスタトン原作、DVD「ブラウン神父(1)」を買ってしまった。
映像では、この欄でも何度か書いたが、ホームズもマープルも、ポアロも、メグレ、フォイル、金田一等々、大いに探偵ものを楽しんできた。クリスティの探偵ものは、原作より面白く、よくできている(と思える)。最近では警部モースや、若き日の刑事モースを存分に楽しんでいる。
ブラウン神父ものは、短編集で、The Innocence of Father Brown(童心)、The Wisdom(叡智)、The Incredulity(不信)、The Secret(秘密)、The Scandal(醜聞)の5冊。皮肉屋で鋭利に富んだ反時代批評家のチェスタトンは、日本でも多くの読者を持つ知性である。文庫本とは別に、著作集をもっていたが、愛蔵愛読というほどのことでもなく、翻訳者の福田恆存選集とともに、古本屋の手に渡った。
1篇45分、ゆっくりと見ているが、神父役は、背が高く、かなり魅力的だ。原作者は、ホームズと正反対、まるっきり探偵役には見えない、背が低く、小太りで、叡智を表情にほとんど見せない、反探偵像を創造したが、ドラマではかなり違う。
2 鮎川哲也の出世作『黒いトランク』(1956/7)を再読している。今日は雨の日、うつ伏せで読んでいる。探偵役鬼貫(警部 名前はない)が、若々しいというか、登場人物が、鬼貫の学生時代の友人で、かつての恋人役も登場するという、サービス満点のストーリになっている。この作品が世に出る経緯については、紆余曲折があった。
この作品は松本清張『点と線』(1958)より早い。この作品で、鮎川哲也という作家名が生れ、乱歩や横溝正史と異質な、他に類例がない日本の探偵小説家が生れた、ということになる。そうそう、以前にも書いたかもしれないが、『点と線』の犯行場所とこの作品の犯行場所は、近い。それに暗い。鬼貫は満洲引き上げ組(『ペトロフ事件』1950)で、作品では犯人の影を追って、対馬まで行っている。対馬は、大西巨人『神聖喜劇』の舞台(駐屯地)になったところで、『黒いトランク』の対馬(厳原)は爆撃に遭わなかった美しい地として描かれている。
3 新聞に連載したコラムをまとめた。『大コラム 平成思潮 時代変動の核心をつかむ 1』(言視舎)という書題になった。「大コラム」である。たしかに、1で300頁余になる。2も削りに削っているが、まだ700枚をこえている。おそらく400頁を超えるだろう。(削らなくちゃ!)激動の30年である。大正期も激動であった。平成期も、負けず劣らず激変期だ。その時代思潮の「波動」を倦まず弛まず追い続けてきた(つもりだ)。来ることができた。起用してくれた編集者のおかげだ。執筆当時は無我夢中であった。しかしこの30年を振り返って、昭和天皇崩御時「昭和史と天皇」を書いて以来、わたしにとっては幸運の連続であり、雑知のかぎりを注ぎ込んでできあがった財産とよぶほかのないものである。
4 そういえば、(ちょっと大げさにいえば、)雑誌や週刊誌、新聞等に連載したものが、日の目を見ることなく埋もれている。開高/谷沢/向井、三人について書いたものは、優に500枚を超えているに違いない。『中外新聞』に連載した関西人の人物評は、力を入れたし、プルタルコスの「英雄伝」の解説/読み所はずいぶん執着したし、社長の哲学と銘打ってこれくらいはプレジデントに読み解しもらっても、損にはならによ、というふうのエッセイ、いま読み返しても面白いと思えるのじゃないだろうか。