読書日々 814

◆170127 読書日々 814
「自国ファースト」とグローバリズムは、盾の表裏である。
1 連日、トランプ、トランプ大統領の記事がトップを飾っている。「アメリカ(ン)ファースト」、「保護貿易主義」(protectionism)批判が焦点だ。では「都民ファースト」や「道民ファースト」はどうなのか? 「会社ファースト」ではなく、「社会ファースト」ならいいのか? 「社会」とは、「人類」なのか? 住民、宗教、国家、民族という「壁」はないのか? 「EUファースト」、「ニューヨークファースト」や「カルフォルニアファースト」は、どうなるのか? 
 第一に押さえなければならないのは、民主党のオバマ政策の基本も、「アメリカファースト」以外ではなかった。しかも「グローバリズム」である。トランプも、基本は同じだ。ただし、トランプは、オバマのように、上品な言葉で語らない。「壁」を不法に押し入ってくるのに対しては、鉄「壁」で防ぐ、という。人類はたしかに「同じ舟」に乗っている。同時に、その「舟」には部屋割りがあり、相互に不介入の領域がある。トランプは、カナダやメキシコとの自由貿易協定の改定を迫る。アメリカンファーストに反するからだ、という理由だ。もちろん、オバマのアメリカンとトランプのアメリカンは同じではない。
 グローバリズムとは、地球主義で、単一市場経済と自由競争が特質だ、といわれる。だが、もちろん、国境=さまざまな障壁はある。イギリスが単一貨幣(ユーロ)導入を拒否したり、EU離脱を敢行し、ギリシャやポルトガルがEU離脱の危機にあるのは、あらためて国境と国民の「壁」があることを実証している。TPP(環太平洋経済連携協定)もNAFT(北大西洋自由貿易地域)も単一市場の形成を目指すが、貨幣(為替)や国境の障壁を「否定」するものではない。TPPに反対する日本の農業団体は、「日本(政府)ファースト」よりは「農業(農協)ファースト」を(当面)選ぼうとしているのだ。グローバリズムは「自国中心主義」を乗り越えようとするが、「自国中心」と矛盾しない。これは、会社ファーストで行こうとすれば、社会ファーストを無視できないのと同じだ。「国境」があるのに、隣国の国境を無視するチャイナなどのような「チャイナファースト」と、「国境」の存在を認めようとする「アメリカファースト」とはおのずと異なる。
 2 フォーサイス(1938~)『ジャッカルの日』(1970)はドゴール(仏)大統領暗殺計画を描いた傑作だが、フリーマントル(1936~)は、同じ国際ジャーナリストとして、「わたしならもっといいものを書いてみせる」と言ったとか言わなかったとか。『別れを告げに来た男』(新潮文庫 1979〔原題 GOODBYE AN OLD FRIEND 1973〕)は、そんなフリーマントルの処女作で、ソ連崩壊以前のソ連(社会主義政治)の内情を、もっとも軟らかい部分で活写した、「スパイ小説の最高傑作」(向井敏)と言っていい。つぎつぎに、フリーマントル『消されかけた男』『呼び出された男』『十一月の男』等(新潮文庫 稲葉明雄訳)で読む羽目になった。それだけではない。フリーマントルには『シャーロック・ホームズの息子』(上下〔2004〕)や『ホームズ二世のロシア秘録』(〔2005〕ともに新潮文庫 日暮雅通訳)がある。社会主義政治に精通したフリーマントルの原作を、是非、シリーズで映像化して欲しい。ま、そのうち英国で撮られるかも知れないが。
 「秘録」には、レーニンやトロツキ、スターリンも登場する。そういえば、ホームズ(1854年1月6日~1957年1月6日 104歳)は、マルクスやエンゲルスの時代からフルシチョフの時代まで生きたのだ。ほぼマルクス主義の誕生から社会主義の最全盛期までだ。1960年代、世界地図の過半以上が、赤とピンクで塗られていたのだった。
 3 正月以来、一昨日まで、雪らしい雪が降らなかった。昨年末にどかっと降ったが、例年より少ない。といっても雪はねは、わたしの仕事ではない。雪はねといえば、鷲田商店の前を朝から晩まではねていた父の姿を思い起こす。父はけっして急がなかった。広い店の前を淡々もくもくと除雪してゆく。ずいぶん年老いていたように思えたが、まだ50代だったのだから、今のわたしより20も若いのだ。