読書日々 834

◆170616 読書日々 834
民間主体の新潟総合学園の実践と札幌大学の試練
 6/14、今月予定の仕事をはやばやと終え、ひさしぶりに街に出た。長沼中央まで車で送って貰い、14:20(夕鉄バス)→大谷地(地下鉄)→大通という最短コースで、16時少し前に到着。西出口の地下道(BF2)から、寂しい飲食街(BF1)を通って路に出ると、筋向かいにホルモン焼きの飲み屋があり、3時開店とある。タパスは4時から。つい初見で入った。ビール1本だけだったが、付け出しのホルモンの煮込みがきれいでおいしかった。品数も多い。珍しい。亘にちょっと寄って、6/27日巡礼仲間との会食仕込みを頼む。好都合なことに、カウンターなら空いているとのことだ。煌→きらく→バーサンと回って、ようやく車を拾って、厚別に帰る。最後はあまりというか、ほとんど記憶にない。タクシーの領収だけがある。それでも歯を洗って寝たようだ。
 6/15 新さっぽろ10:40(夕鉄バス)→11:23と逆コースで戻った。このバス、夕張北清水沢行きの急行で、長沼までほとんど止まらない、40分余の行程だ。自家用車で行くのとほとんど変わらない。速い。夕張、由仁は、過疎地の典型だ。最盛期10万を超えた夕張の歴史が、このバスに残っている。
 1 鮎川哲也の短編集『早春に死す』(光文社文庫)には既読が3本入っていた。これには歯が立たなかったが、「急行出雲」のアリバイ崩しは、読めた。ま、犯人ははじめから分かっている(よう)なのだから、とんだどんでん返しがなければ、何とか読み通せたというべきだろう。急行「出雲」と「大和」は、『砂の城』にも登場した。
 『鮎川哲也読本』(原書房 1998.9.3)は、通常のムック形式の「読本」とは違い、ハードカバーの本だ。芦辺拓・有栖川有栖・二階堂黎人(れいと)編で、発刊当時はまだ若手の本格ミステリ作家だ。この本は、「読本」の類型通り、至れり尽くせりの内容だが、そこがまたちょっとした欠点になっている。わたしは山前譲が書く鮎川論をじっくりと読みたい。一時住所を移した(長沼の隣町)北広島の旧宅も見つけてみたい。
 芦辺たちの言によると、江戸川乱歩が日本探偵小説を創り、鮎川哲也が本格探偵小説を創めた、日本のクロフツ(『樽』)だ、ということだ。ま、鮎川は1909年生まれの松本清張より10歳若いが、作家デビューは早い。清張(「西郷札」)は1951年で、鮎川は50年にすでに長編『ペトロフ事件』を出している。初期の代表作、鮎川『黒いトランク』(1956)は『点と線』(1957)に先行している。社会派ブームの火付け役となった清張に対して、本格モノは気息奄々できた。鮎川は、本格一筋の偏屈だ。
 2 池田弘(1949~)『地方イノベーション』(日系BP 17.2.13)を仕事で読んだ。学習塾や専門校からはじめて、77年新潟総合学園を創設、00年新潟医療福祉大学(事業創造大学院)を含む新潟総合学院に発展させ、地域の活性化のために人材育成(教育)を中心において、民間主導のビジネスを展開している怪物だ。その傘下の「学生」在籍数は、1万を超える。
 少子化で、とくに地方の教育ビジネスは斜陽化した、というが、それは表面だ。手をこまねいてのことだ。日本の大学(高等教育)進学率は高くない、もっと高くなる。新卒者の就職率は抜群に高い。
 大学や高校が消えると、町や村は寂しくなる。消えてしまう。これは、後ろ向きの、出来もしないことを願う、ネガティブな心情からのものだ。じゃあ、学校をつくる。若い人(老人も厭わない)を集める。そこで働く人を育てる。なぜ、こうならないのか?
 何度か書いたが、あのユニクロも、繊維・着衣メーカで、文字どおり斜陽産業なのだ。競争が進化の母だ、を実践し、1勝9敗をくり返している。東レは炭素繊維(鉄鋼より硬くて軽い)で活路を開いた。大学授業料の無償化、私立を税金立に変える、などは愚策の一つだ。全国都道府県にある、教育大学の惨憺たる状態を見るといい。わたしのいた札幌大学は、地域創生を旗印に、学部の壁を取り払った、リベラルアーツ(教養)大学に、形を変えた。苦戦を強いられている。が、医療や経営ビジネスに特化した池田の新潟総合学院とは真逆の、どの道へすすんでも通用する能力(教養・人間力)を養成する、もっとも古くて新しい大学を目指している。わたしは、将来性は札幌大学の方にある、だがこの10年が正念場だ、そう思える。