読書日々 833

◆170609 読書日々 833
やれやれ、今年の上半期のノルマは終わったかな?
 今日は快晴だ。最近よくかけるCDは、映画「ミスター・シャーロックホームズ 名探偵最後の事件」のテーマ曲だ。舞台となる南英の海岸に近い田園地帯によくマッチする美しいメロディだ。前にも書いた(はず)だが、映画もいい。
 1 『日本人の哲学 名言100』(言視舎)の2校を終え、朝食の前に、宅配便を妻に頼み、食後、これを書きはじめた。6月中に出るそうで、中澤千磨夫さんの小津論、中村嘉人さんの書き下ろしエッセイともども、そろい踏みになる予定だ。嬉しい。でもかなり目が疲れた。といっても、昨日、また鮎川哲也の長編を読んでしまった方が、影響大だろう。
 2 その鮎川本格ミステリだ。『積み木の塔』(1966 94)は、急行海星を配した、「学歴詐称」が犯罪のキイポイントになる。大学に長く籍を置いていた。学歴・経歴詐称は、ときに、「公文書」偽造に当てはまる。ところがそれに該当するケースが少なくないのだ。たとえば、最終学歴は「名古屋経済専門学校」なのに、「名古屋大学経済学部」と書くと、確実に「詐称」になる。書いた本人が、名大経済学部は、新制で、名経専を一つの母体として生まれたと了承して、名大・経卒と記しても、厳密にいえば、詐称に当たる。
 もちろん、正真正銘の「詐称」もある。学歴にかぎらない。清張『砂の器』は、爆撃で戸籍簿を消失した大阪「出身」の主人公が、偽の戸籍(新戸籍)を造ったことが事件のポイントになった。わたしは、大阪大学大学院文学研究科(哲学哲学史)博士課程を出ている。だが、「了」ではなく、正確には、「単位修得満期退学」なのだ。「博士号」を取っていないからだ。
 何で「学歴」などペーパー上のことに過ぎないではないか、目くじらを立てる必要はないではないか、と思える人は、婚姻届も一枚の紙にすぎない、と考えることができる人だ。でも、この届けのあるなしで、事情が一変する事実に遭遇すると、臍をかむことになる。連帯保証人の「実印」を押すのより、はるかに重大なのだ。
 『砂の城』(1963 1996)は、急行出雲が舞台で、「贋作」がテーマだ。(ただし、贋作者を別な人に振り当てることは可能ではなかったろうか。)トリックは、わたしも乗ったことのある国鉄路線にあった。そうそう、鮎川の作品は、国鉄時代の路線が舞台で、時刻表が鍵だ。現在とはおよそ違う。この差異感覚も、また現在の読者には面白いのではないだろうか。
 『王を探せ』(1981)は、「長すぎるプロロオグ」、「中途半端な間奏曲」、「まとまりを欠いたエピロオグ」が挟まるように、読者には「倒叙物」の変形に映って、凝集力に欠けるできあがりになったとという感じがつきまとう。つまりは、散漫を否めない。最初にトリックねたが、わたしでも分かってしまう。それが裏切られることを期待して読んだが、予想は裏切られなかった。(最近、「……板」を盗む法を、披瀝するマニアがいた。まさかこの本を読んだからではないだろうね。)
 以上三冊、目も痛くなるという道理だ。
 3 6/5 北方文芸展で出だす冊子に「北方文芸とは何であったか」を12枚で書けと文学館谷口専務理事から下命があった。かつての記録(書いたもの)を案配して、50枚、送った。「長い部分」(北方文芸・小説ベスト20)は外して結構、と記したが、全文載せるという。「古証文」の類いだから、「沽券」にかかわるかな。ま、かまわない。
 何せ、小笠原克、沢田誠一両氏も、森山軍治郎も川辺為三さんも故人だ。手前勝手を書くわけもゆくまい。
 4 道新の読書欄に、沓沢久里『通天閣の消えた町』(亜璃西社 2017)評(700字)を書いた。締め切りをずいぶん残しているが、いいモノはすぐ書ける。これが書評の鉄案。すぐ送った次第だ。
 5 巡礼仲間の岩崎さん一行が来札する。27~29の予定。飛行機券は買ったそうだ。そうそう、6/26に沓沢久里の出版記念会がある。次第は亜璃西社に聞くといい。