読書日々 867

◆180202 読書日々 867
探偵が殺人者で、自死するって、ぞっとしない
 一年でいちばん寒い季節だ。恒例の札幌雪まつりが開幕する。これと関係あるわけではないが、娘の家族が遊びに来ているのに、間が悪いことに、風邪を引いてしまった。ずいぶん長いあいだ(?)引かなかったが、ここのところ少し仕事に集中している。三日目に入るが、多少よくなった。これは異例の長さだ。
 1 名張の乱歩研究家、中相作さんの『乱歩謎解きクロニクル』(言視舎)が発刊に向け進んでいるそうだ。読むのがいまから楽しみだ。これがひとつの弾みになって、中さんの仕事(works)が陸続と姿を現すことがあれば、こんなうれしいことはない。
 それにしても乱歩だ。研究だけでもたくさんある(ようだ)。だが、カント・ヘーゲル・マルクス研究と比べると、ものの数ではない。乱歩は、ミステリ作家であるが、その生業(job)はというと、戦後はミステリ研究家である。ミステリ・アンソロジイの編者であり、雑誌等の編集者であった。
 アメリカのエラリ・クイーンは、数々の傑作を送り続けた作家だが、その作品は、ユダヤ出身のイトコ(同じ歳)、ダネイとリー(どちらも筆名)の合作で、しかも「国名」がつく初期の傑作長編を次々に送り出していたとき、バーナビ・ロスとしてX・Y・Zの悲劇、そして『ドルリイ・レーン最後の事件』を書いている。わたしは、最初、X・……の4作品を読んだ。30代のときだ。もちろん翻訳だったから、クイーン作品としてだ。
 探偵作家は、探偵を殺すだけではなく、犯罪者にしたいらしい。X・Y・Z、は存分に面白かったが、最後の事件は、どうもいただけなかった。これはドイルやクリスティにも共通するところで、作家は生きているうちに「分身」ともいえるホームズやポアロを始末せずには、どうも死ねないようなのだ。探偵クイーンは、作家自身でもあるから殺せないが、レーンの死に水をとらないと後味が悪い。こういうことになる。
 クリスティ『カーテン』は出たときすぐ買って読んだが、凡作だった。『最後の事件』は後味が悪かった。2作とも、作者絶頂期の作品だ。それもあって、エラリイ・クイーンの作品を読むのをやめた。これはとんだしくじりだったことは、40年後にやっと気がついた。ま、それでも遅くはなかったが。
 クイーン『フランス白粉の秘密』を読んだ。夜中、多少熱中して床の安絨毯に寝そべったまま読んだのが、どうも風邪のきっかけであったようだ。存分に面白かったが、犯人はもっと複雑な人間模様を生き抜く狡猾怜悧な人間であってもいいのではないだろうか。探偵より「有利」な位置にいる人間なら、もっといい。そう思えた。
 2 鮎川哲也のクイーン好きは知られている。笑わば笑え、「ベタ惚れ」とさえいう。
 クイーン『ニッポン樫鳥の謎』の単行本原題は「The Door Between」(1937)で、「純」国名作品ではない。ただし誌上では「ニッポン扇の謎」と題されていた。この作品をまず読もうとしたが、ナンダ「国名」作品とは違うのか、と簡単に鵜呑みにして、放っておいた。「凡作」の評価がおおくある。果たしてそうなのか、どうか、読んでみないとわからない。これが本読みのルールだろう。それにトライアルしてみたい。
 3 夏木静子が亡くなって、2年近くなる。前に一度書いたが、TVミステリの愛好家として、夏木の作品は一頭地を抜いていた。現在もなお再放送で、出ずっぱり状態だが、リメークしてほしい作品ばかりだ。
 そして意外といいのは、娘が出るのでつや消しだが、山村美紗のドラマだ。ただし、二人の作品は、主演女優が問題で、ときに既存の女優でない人を起用してみてみたいものだ。
 はじまった「BG」は、予想通り凡作だが、キムタクはそれなりにやっている。観て面白い味は出ている。