どくしょ日々 935

◆190524 読書日々 935
本格ミステリ大賞受賞 中相作
 なんか異常に暖かい。それでも、部屋の中にじっとしていると鼻水が止まらない。
 1 6チャンネルで「白い巨塔」がはじまった。原作の舞台は、60年代末から70年代の大阪大学だ。それを現在に置き換えている。面白いのは、ケイタイがガラバゴス方からスマートフォンまで多種多彩ということで、大阪の古い待合と新奇なバーの組み合わせも面白い。
 当時の大阪大学の医学部は、曲直部(まなべ)寿夫(1921~96 心臓外科)や村山雄一(1918~96 免疫学)等の「怪物」が跋扈した時代で、臨床医術は群を抜いると豪語し、わたしなぞにも威張っていた。室町時代から名医で看板を張っていた曲直部〔まなべ〕さん、山崎豊子の原作を読んで、教授選はあんな生やさしいものではない、といったとかいわなかったとか。そういえば、司馬さんの作品に曲直部道三が出てきたっけ。
 ま、俳優が、大学教授や医者、画家をやると、どうも「それ」っぽすぎてむしろしっくりしない。今回もそうだ。学業と仕事と人間が一致するなんて、ま、ありえない。
 2 かなり長い期間、緊張して福沢諭吉論に集中してきた。はじめてから10年余だから、専門家というわけにはいかない。
 それでも大阪くんだりまで流れてきたのに、大阪では諭吉評価がかなり低いと感じた。大阪の根性はおのれを頼むことはあるが、過大評価は慎むというデリシーがある。
 これは京都の今西や梅棹と違う特徴で、ま、親分になろうという心意に多少恥ずかしさを感じるデリカシーだ。
 わたしは広松渉さんが好きだが、それでも広松さんとそのグループは徒党を組むことを好んだ。ま、いってみればたわいもないグループだ。広松さんが亡くなると、四分五裂するのも当然だった。
 そうそう、名前は忘れたが、髙幣さんの先生が社会史思想学界で来札したおり、案内を仰せつかった。助手以下ぞろぞろとついてきた。スナックでカラオケをし、さんざん政治路線の与太を吹いた後、その教授、これで払いたまえと宣った。万札一枚。
 3 福沢諭吉はいちおう終えた。でも緊張が解けない。三宅雪嶺は諦めた方がいい、と思える。
 ゲラが2冊分机の上にある。とつおいつやっている。校正で直さないことを旨としてきた。ところが頭がバカになったのか、直そうとしても直せない。これはつらい。ゲラで読むと、自分の書いたものが下等に見える。これも辛いの。
 そんなこんなで、この半月通じが悪い。『日本人の哲学』を書いているときは、それはもう大変だった。今回はそれほどではないが、五能線に乗って、能代は米代川まで行ってみたい。ピーポーピーポーになること間違いない。
 一年ぶりの旅だ。酒なし、○×なし、……そんな旅だ。
 3 あいかわらず山本夏彦をトイレ本にしている。単行本から文庫になった。女房が、雑草刈に長沼に行く。そのとき、残りの本=残骸の中から引き抜いてきてくれる。なにが辛いったって、古本屋に売った(?)本だ。でも諦める。それよりもっと切ないのは、売れ残った本(古本屋に持参拒否された)だ。それが見つけ出せない。ま、無難にいえば、わたしが車(免許)を放棄し、馬追の家に行けないからだが。
 4 それでも、何度か書いたとおりここにもどって、鮎川哲也のミステリを読む機会に恵まれた。わたしの頭脳がもう少し明晰なままならば、ピシッと食らいつくことが出来ようもあったが、なにせ、清張や乱歩、正史の類ではない。鮎川=奇人変人だ。わたしとまったく違う。
 鮎川論をある評論家に依頼したが、なしのつぶてだ。そうそう、乱歩論、中相作『乱歩謎解きクロニクル』(言視舎 2018)が本格ミステリ大賞(評論)を受賞した。名張出身で、わたしの親友、田畑の推挽によった。